COLUMN

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Interview05 サンゲツヴォーヌ×建築家 成瀬友梨さん×建築家 猪熊純さん

シェアする場のデザイン(第2話)

FabCafe Tokyoと
柏の葉オープンイノベーション・ラボ
(31VENTURES KOIL)

INTERVIEW

牧尾


FabCafe Tokyoの2015年のリニューアルについてお聞きします。2012年のFabCafe Tokyoオープン時にも空間デザインを手がけておられますが、3Dプリンティングのような最先端の機器と飛騨の木の融合に意外性がありますね。

猪熊

クライアントであるロフトワークさんがFabCafe Hidaや「ヒダクマ」の活動で飛騨に携わっておられて、ここでも飛騨の木を使えたらいいなというご要望がありました。
これは大きなコンセプトなので、当然なるべく多く飛騨の木を使いたい。でもそのまま木材ばかりを空間に使うと、カントリー調の内装になってしまい、デジタルファブリケーションの工房的な雰囲気からは遠ざかってしまう。またこの場所は野菜を中心とした料理をきちんと出していくことになっていたので、野菜の色を鮮やかに演出したかった。
解決方法を模索している時に実際に飛騨に木材を見に行き、年月が経ってグレーになっている木材に目が留まり、この雰囲気を再現したいなと。ただエイジングのグレーは、すこしヤスリをかけるだけで剥がれてしまうので、そのまま使うことはできず、わざわざ一度ヤスリがけした木を再度シルバーに塗ってから塗料をふき取ることにしました。
このデザインを、エイジングのグレーのフェイクとして見てしまうと面白くないなと思っていて、実際の空間は結果的に全く別物です。
角度によってはすこし光って見え、古材のようでもあり金属のようでもあり、とても豊かな空間です。

Interview05 サンゲツヴォーヌ×建築家 成瀬友梨さん×建築家 猪熊純さん
Photographer: Kenta Hasegawa
Photographer: Kenta Hasegawa

牧尾

建築とインテリアデザインの境界についてはどのようにお考えですか?

猪熊

我々の世代はだいぶ越境しはじめているというイメージがあります。特に僕たちは形や素材ではなく、どういう場をつくるかということに興味をもっていて、そうした視点からは、建築、リノベーション、内装デザインのどれでも同じです。
たとえば今は家電メーカーとプロダクトをつくっていたりもします。プロダクトデザインは本来我々の仕事ではないですが、「プロダクトを通じて新しいコミュニケーションをどう生み出すか」というテーマ設定だと、我々の仕事の範疇に入ってくるんです。建築家も目指す社会を語っていく時代なのかと考えています。
結果的には、インテリアデザインから学ぶことも多く、良かったと思っています。建築の設計面でも、インテリアが分かっていることでスキルアップする部分があります。建築の解き方を考えるときに、インテリアを知っているからできることがあります。そういう要素が増えていると感じますね。
40代になると、ある程度の経験を積んで慣れている仕事に特化していくひともいるでしょう。でも僕たちの事務所では常にチャレンジ。ふつうだったら建築家はやらないことにも挑戦していることが多いです(笑)。

Photographer: Kenta Hasegawa
Photographer: Kenta Hasegawa

牧尾

シェア空間でいうと、柏の葉オープンイノベーション・ラボ(31VENTURES KOIL)も印象的でした。

猪熊

KOILでは余白や自由度のある空間を意識しました。
レクチャーやシンポジウム、ワークショップはもちろん、ミニ四駆大会なんかも開催されたことがありますね。

成瀬

企業のセミナーや研修でも使われています。たとえば、普段は上下関係がかなりはっきりしている企業が、若手の意見を聞くためにここで研修を開催したそうです。フラットに話せるということで。服装も普段着で。場が「まざってもいいよ」と言ってくれてるのが大事です。

Photographer: Masao Nishikawa
Photographer: Masao Nishikawa

牧尾

こちらのテキスタイル、かなりインパクトがありますね。

猪熊

テキスタイルデザイナーの安東陽子さんに入ってもらって、シルバーのカーテンにしてもらいました。消防服みたいにギラギラの布に印刷してプリーツをかけてもらっています。このくらいの迫力のカーテンでないと、この空間に負けてしまうので。コラボは楽しいですね。

牧尾

コラボの場合、デザイン工程のどのあたりからご一緒されるんですか?

成瀬

プロジェクトによって様々ですが、この空間の場合には、設置する場所やサイズ感なんかもかなり決まってからお願いしました。自然光が入ってくるなかでプロジェクターを使うのである程度の遮光が必要だったりと、要件がかなり明確だったので。あと、音も気になることがあるので、ベルベットの布で音を吸収できるようにしていただきました。

Photographer: Masao Nishikawa
Photographer: Masao Nishikawa
成瀬 友梨さん

PROFILE

建築家成瀬 友梨さん

愛知県出身。東京大学工学部建築学科卒業、同大学院修士課程修了、同大学院博士課程単位取得退学の後、2007年に成瀬・猪熊建築設計事務所共同設立。

猪熊 純さん

PROFILE

建築家猪熊 純さん

神奈川県出身。東京大学工学部建築学科卒業、同大学院修士課程修了の後、千葉学建築計画事務所を経て2007年に成瀬・猪熊建築設計事務所共同設立。

「シェアする場をつくること」をコンセプトに、社会情勢の変化にあわせた新しい住まい、オフィス、商業施設などを手がける。本コラムで紹介している以外にも、キュープラザ二子玉川、天川村南日裏定住促進住宅、坂の上テラス、株式会社デンソー名古屋オフィスなど多くの建築・内装設計やインスタレーションに携わっている。第15回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展 日本館 特別表彰、GOOD DESING AWARD 2015・グッドデザイン賞(りくカフェ本設)、日本建築学会作品選集 新人賞(LT城西)など受賞多数。
(プロフィールは記事掲載時(2018年8月)のものです)

聞き手

牧尾 晴喜

株式会社フレーズクレーズ 代表
一級建築士、博士(工学)
メルボルン工科大学大学院修了、メルボルン大学にて客員研究員
大阪市立大学非常勤講師、摂南大学非常勤講師
公益社団法人 日本インテリアデザイナー協会理事