COLUMN

Interview 01 サンゲツヴォーヌ ☓ 建築家・空間デザイナー 鬼木孝一郎さん Interview 01 サンゲツヴォーヌ ☓ 建築家・空間デザイナー 鬼木孝一郎さん

魅力的な商業店舗のつくり方(第1話)

『エルメス祇園店』での伝統と革新

エルメス祇園店やGINZA SIX内の
ギャラリーをはじめ次々と話題作を
手掛けるとともに、
国内外で多数の受賞も
されている鬼木孝一郎さん。
魅力的な商業店舗のつくり方や、
それぞれの物件でのデザイン上の工夫を
うかがうシリーズの第1回目です。

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INTERVIEW

聞き手:牧尾さん(以下:牧尾)


まずは、『エルメス祇園店』についてお聞きします。大丸の創業300周年を記念した企画の一環として、大丸京都店 祇園町家の建築工事の設計、さらには第一弾として出店した『エルメス祇園店』(2016年11月から2017年7月までの期間限定店舗)のインテリアデザインを担当されました。
初めて聞いたとき、「エルメス」と「祇園」という言葉の組み合わせにまず驚いたのですが、いかがでしたか?

鬼木さん(以下:鬼木)

たしかに、「エルメス」と「祇園」っていう2つの言葉は、ほとんどつなぎあわされることがなかっただろうと思いましたが(笑)、意外としっくりきているとも感じました。なんでだろうって共通点を考えてみたら、職人を大事にしているという共通点があるからだと気づいたんです。エルメスは馬具工房として創業していまも職人を大事にしていますし、京都も職人を大切にする街です。だから、その共通点を掘り下げてデザインしていこうと。

京都祇園の町並みの風景 写真:太田拓実
写真:太田拓実

牧尾

敷地は京都祇園の中心を通る花見小路沿いで、茶屋・住居として使用されていた町家を改修して店舗として再生させています。伝統が色濃い場所だけに、魅力とともに苦労もあったのではないでしょうか?

鬼木

はじめにお話をいただいたときに、とても特殊な立地だなあと感じました。そこに店舗を構えるということで、町屋と祇園の街との境界をどうするのがいいかを考えていったんです。とはいえ、景観保全修景地区に指定されている場所なので、ファサードの変更は一切認められないというルールがありました。つまり、街に対してどれだけ開くべきかという問題以前に、そもそもまったく開けないという条件だったんです。
でも完全に閉じたインテリアにしてしまうと、せっかくの周辺地域との関係性が遮断されてしまうので、うまくつなぎあわせることができないかと考えました。そこで敷地内に新しく路地空間をつくって、その路地に対して開いていくという空間構成でつなぎあわせていきました。

エルメス祇園店の店鋪 写真:太田拓実
写真:太田拓実

牧尾

この期間限定店舗は、一定期間ごとにさまざまなイベントを店内で行う前提での設計となっています。エルメスのカレを後染めするというオープン時のイベントでは、木組みの什器とカラフルなスカーフの組み合わせもとても印象的でした。

鬼木

たしかに、最初のスカーフの企画のことを聞いて、なんて素晴らしい企画なんだろうと驚きました。
あとの企画については、具体的な商品やテーマはこれから決めていくという状態で、どういう什器デザインにすればどういう使い方ができるかを話しあいながらデザインを進めていったんです。
一般的に、お店を設計するときには「こういう商品をいくつくらい置きたい」といったご要望をいただいて、それに対して什器を考えたりデザインをします。言われた内容そのままとは違うものを提案することもありますが、何らかの基準みたいなものがあることが多いんです。
でもこのエルメス祇園店の壁面什器のときは、服やバッグ、アクセサリーなど、大きさも全然ちがうし、しかもそれがいつ来るのかが全然わからない状態でした。だから舞台の背景のような作り方をしています。木組みに対してアタッチメントをつければいろいろな展示ができるし、商品が何もなくて空の状態でも成立するように心がけました。

エルメス祇園店の壁面什器 写真:太田拓実
写真:太田拓実
鬼木 孝一郎さん

PROFILE

建築家・空間デザイナー鬼木 孝一郎さん

1977年東京都生まれ。
早稲田大学大学院卒業後、株式会社日建設計勤務。
その後、有限会社nendo入社。10年間に渡りチーフディレクターとして国内外の空間デザインを手がける。
2015年、鬼木デザインスタジオ設立。
2017年、株式会社鬼木デザインスタジオに組織変更。
建築、インテリア、展示会の空間デザインを中心に多方面にて活動。
American Architecture Prize、Singapore interior design award、日本インテリアデザイナー協会(JID)賞など受賞多数
(プロフィールは記事掲載時(2017年11月)のものです)

聞き手

牧尾 晴喜

株式会社フレーズクレーズ 代表
一級建築士、博士(工学)
メルボルン工科大学大学院修了、メルボルン大学にて客員研究員
大阪市立大学非常勤講師、摂南大学非常勤講師
公益社団法人 日本インテリアデザイナー協会理事