COLUMN

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Interview01 サンゲツヴォーヌ×建築家・空間デザイナー 鬼木孝一郎さん

魅力的な商業店舗のつくり方(第2話)

GINZA SIXのギャラリー、
デザインの方法

INTERVIEW

牧尾

つぎに、銀座にある複合施設「GINZA SIX」内のギャラリー『アールグロリュー』のインテリアデザインについて聞かせてください。このギャラリーには、オープンして間もない2017年5月、草間彌生展のときにうかがったんですが、落ち着いて作品を鑑賞できるとともに、図面で見るよりも広く感じました。

鬼木

ありがとうございます。このギャラリーのデザイン、じつはかなり苦労したんです(笑)

Interview01 サンゲツヴォーヌ×建築家・空間デザイナー 鬼木孝一郎さん
銀座にある複合施設「GINZA SIX」内のギャラリー『アールグロリュー』写真:太田拓実
写真:太田拓実
『アールグロリュー』の展示空間 写真:太田拓実
写真:太田拓実

牧尾

そうだったんですね。たとえば、どのようなご苦労がありましたか?

鬼木

ギャラリーや展示空間って、つきつめていくと「白い箱」が求められるんですよね。あくまでも、その空間に入っている作品が主役であって、それ以外は「漂白」されているような状態です。ほとんどの現代美術館って、基本的に展示空間はそういうホワイトキューブで、それ以外の空間をどうつなぎあわせるかという工夫がされているんです。
今回は、そういう「展示以外の空間」はなく、ほぼすべてが展示空間という条件でした。最初、ブランドイメージを打ち出すために壁にも仕掛けを考えたことがあるんですが、果たしてそれが日本画や抽象画に合うかといったことを考えると、違う方向性で考えるほうが良さそうだ、と。そうやって最初から考え直して、人の動きに着目するほうが面白いものができそうという結論にいたったんです。そこで、対角線上に斜めの壁を1枚設けることで、台形のかたちをした2つの展示室をつくることにしました。そうやって斜めの壁でひとの動きを制御すると同時に、空間の大きさと連動して床の色がグラデーション状に変化するように計画しました。床の色が変わることによって、奥にはいっていきたくなるような感じにしたかったんです。

『アールグロリュー』の展示空間 写真:太田拓実
写真:太田拓実

牧尾

それに比べると、美容関連商品を扱うブランド『dear mayuko』(ディアマユコ)は、壁や境界で完全に閉じられていない空間ですね。

鬼木

あのプロジェクト自体、もともと敷地が決まっていなくてデザインさせていただいたんです。ブランド立ち上げのタイミングで入らせていただき、パッケージデザインなどを進めるなか、店舗デザインをどうしようか、とお話をいただきました。
さまざまな規模・立地条件での出店が想定されたので、たとえば路面店や一坪の店舗の場合にも対応できるようなデザインルールをつくる必要があったんです。一貫したブランドイメージを打ち出しつつも、どういう形にでも対応できるよう、125mm角のグリッドシステムという、ゆるめのルールのみを設定しました。商品を使う主な場所であるお風呂場を連想させるような要素、タイル目地から発想しています。
今後は、シャワーヘッドを連想させる照明器具など、新たなデザイン要素もどんどん追加していきたいと考えています。

『dear mayuko』(ディアマユコ) 写真:日本デザインセンター 岩崎彗
写真:日本デザインセンター 岩崎彗
『dear mayuko』(ディアマユコ) 写真:日本デザインセンター 岩崎彗
写真:日本デザインセンター 岩崎彗
鬼木 孝一郎さん
写真:日本デザインセンター 岩崎彗

牧尾

ちょっと話は変わりますが、鬼木さんが好きな場所や建築を教えていただけますか?

鬼木

じつは今回、サンゲツヴォーヌのインタビューということでお話をさせていただいていて、
「境界」をテーマとして感じています。

牧尾

ありがとうございます。そうですね、カーテン販売会社としてブランドデビューしたサンゲツヴォーヌなので、とくに境界や空間のつながりについてのお話をお聞きできると嬉しいです。

鬼木

好きな建築はたくさんあるんですが、そういうテーマからひとつ選ぶとすれば、金沢21世紀美術館になりますね。何度も行ってます。金沢の市内にあり、美術館という閉鎖的になりがちなプログラムでありながら、円形にして5か所から入れるようになっている。よくみると、有料ゾーンの部屋同士を離して、無料ゾーンから見えるようにしているといった細かな工夫がたくさんあるんです。街と美術館の境界をなくしつつあって、美術館の名作といえるとおもいます。

鬼木 孝一郎さん

PROFILE

建築家・空間デザイナー鬼木 孝一郎さん

1977年東京都生まれ。
早稲田大学大学院卒業後、株式会社日建設計勤務。
その後、有限会社nendo入社。10年間に渡りチーフディレクターとして国内外の空間デザインを手がける。
2015年、鬼木デザインスタジオ設立。
2017年、株式会社鬼木デザインスタジオに組織変更。
建築、インテリア、展示会の空間デザインを中心に多方面にて活動。
American Architecture Prize、Singapore interior design award、日本インテリアデザイナー協会(JID)賞など受賞多数
(プロフィールは記事掲載時(2017年11月)のものです)

聞き手

牧尾 晴喜

株式会社フレーズクレーズ 代表
一級建築士、博士(工学)
メルボルン工科大学大学院修了、メルボルン大学にて客員研究員
大阪市立大学非常勤講師、摂南大学非常勤講師
公益社団法人 日本インテリアデザイナー協会理事